革製品用塗料といえば、顔料と染料
- SASAKI
- 2024年5月23日
- 読了時間: 4分

革製品専用塗料には、ざっくり2つあります。
一つは顔料、そして染料です。
その原料や違いについては、ぼんやりとしたイメージしかない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事で一緒におさらいしましょう!
1.表面を覆うように塗装するのが、顔料

顔料は、粉末状の塗料です。
水や油に溶けることがない性質なので、製品に塗るときは、「ラッカー」や「アクリル」といった接着させるための薬剤と一緒に塗布します。
顔料で塗装する、とは、つまり製品の表面を、微細な色の粉で覆って色をつけること。
主成分が粉なので、透明性が低く、塗料自体の色を鮮やかに着けることができるという特徴があります。
また、顔料を塗ると、主成分である粉状の固形物で塗装面を覆うことになるため、耐摩擦性が向上するというメリットが生まれます。
このように、顔料は、いわば塗装面を塗料でカバーするものと言えるでしょう。
そのため、先に挙げたように耐久性が上がるだけでなく、水や紫外線にも強くなります。
従って、塗装後は手触りが変わってくる点も、大きな特徴のひとつです。
顔料は、古来から着色に使用されてきた塗料です。
太古の昔、洞窟に手形や動物画など、古代人類は様々な壁画をのこしましたが、あれも顔料によるもの。
日本画の画材として現代でも使われていて、天然の鉱石や土などを粉末状にして、顔料として使っています。
このような天然の素材からつくられた顔料は、無機顔料と呼ばれ、自然で素朴な色合いが特徴です。
合成された成分でつくられるのが、有機顔料。
鮮やかな色合いが美しく、プラスチック製品などの塗装に使われています。
2.素材を内部まで染め上げるのが、染料

一方、染料は、水や溶剤に溶け込む性質があります。
そのため、表面だけでなく、繊維の中にまで浸透していって染め上げるのが特徴です。
革製品でいうと、染料はコラーゲン層まで浸透し、染めていきます。
また、染料は透明度が高いので、革製品の表面の風合いを損ないにくく、すごく自然な仕上がりになるというメリットがあります。
着色性がとても高いので、小さな傷でも色が剥げにくい利点があり、これも特徴のひとつ。
また、色の再現性が高く、調色しやすく自然な発色の良さがあるのも魅力です。
革製品の塗装で染料をつかうと、表面は素の状態に近い仕上がりになるので、本来の見た目や手ざわりがかわらず、革の表情を残したまま仕上げることができます。
塗装後も、革ならではのシワやトラ(筋)がそのまま残るので、革の風合いが好きな方にはおすすめの塗料と言えるでしょう。
ただ、染料は、基本的に顔料より高価です。
また、湿度や摩擦に弱いので、使い続けることによって色落ちしたり、色移りしてしまうことがあります。
このように、職人によっては、この2種類の塗料の特徴について、「顔料は厚化粧、染料はナチュラルメイク」などと評することもあります。
3.目的に合わせて選ぶ

ここまで、顔料と塗料のそれぞれの特徴をご紹介して参りました。
どちらにも特筆すべき特徴があるので、選ぶのに困ってしまうという方は多いことでしょう。
おすすめは、”目的”に合わせて選ぶことです。
たとえば、傷みがひどい革製品を塗装するなら、ダメージ具合をカバーする効果が高い顔料のほうが向いていると言えるでしょう。
顔料は、塗装することで塗装面を塗料でカバーし、革製品を守ってくれます。
擦れに強くなりますし、雨水や強い日差しによるダメージを心配しなくて済むので、日常的にハードに使いまわすタイプのカバンや靴、ベルトなどの塗装によいかもしれませんね。
また、革自体に、毛穴が粗い部分があるなど全体的にムラが強く出ている場合、顔料を使うことで、革の状態が均一になるように仕上げることができます。
革製品の風合いや表情を活かしたい、という場合なら、染料がおすすめです。
革繊維の内部から染め上げる染料なら、塗装後も革の手触りや見た目はそのまま。
長く使い続けることで生まれる、味わい深い風合いを楽しむことができます。
ただ、染料仕上げの革製品は、定期的なメンテナンスをしてあげる必要があります。
メンテナンス方法は様々で、専用クリームや専用オイルを塗りこむなどが挙げられます。
まとめ

革製品の専用塗料には、顔料と染料があります。
顔料は、水や油に溶けない粉状の成分から成り、定着剤と一緒に塗ります。
革に染み込むことなく表面をカバーするように塗料が載るので、摩擦や水、紫外線に強くなるというメリットがあります。
染料は、水に溶ける性質から革製品の内部に浸透して染め上げるタイプの塗料なので、革の風合いを損ないません。
染料で塗装した革製品は、専用のクリームやオイルで定期的なメンテナンスをすると長持ちするでしょう。
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